生理痛専門外来
ひどい生理痛の症状
- 生理痛で学校や仕事を休んだり家事できない
- 生理の度に鎮痛剤を使用している
- ロキソニンを増やしても効かない
- 情緒不安定になったりイライラが止まらない
このような生理痛の症状が一つでもあれば鍼灸治療が必要です。
生理痛とは、生理期間中に伴う下腹部や腰の痛みを感じることです。しかし多くの方が下腹部痛、腰痛にとどまらず、頭痛、倦怠感、むくみ、イライラといった全身症状を伴います。
比較的軽度で気にならない場合から、日常生活に支障をきたす方もおり、症状の出方は人それぞれ全く違います。
いつものことだからと我慢しないで、当院の鍼灸師にご相談ください。
なんで痛いの?
生理痛の原因には大きく分けて
- プロスタグランジンの分泌過多
- 冷えや血行不良、ストレス
- PMS、月経困難症
という3つの影響が関与しています。
プロスタグランジン
生理周期は
- 月経期
- 増殖期(卵胞期)
- 排卵期、分泌期(黄体期)
から構成されています。
月経期は、受精が成立せず不要になった子宮内膜が剥がれ、体外に排出されます。このときに、子宮内膜で作られたプロスタグランジンの作用によって子宮筋を過剰に収縮させ、子宮内ではエストロゲン、プロゲステロンの分泌が低下し、子宮筋は虚血性変化が起こり、疼痛が発生します。
さらにプロスタグランジンとその代謝産物が子宮内に留まらず、血流に乗って全身を巡るため、頭痛、悪心、嘔吐、倦怠感などが現れます。
冷え性・血行不良・ストレス
月経時には体温は下がるもの
そもそも生理になる時は、黄体ホルモンが作用しなくなることによって、0.3~0.6℃ほど体温が下がります。それに加え、冷房や長時間のデスクワーク、立ち仕事などにより下半身が冷えることで、骨盤内の血行不良をきたし、生理痛が起こりやすくなります。また、精神的なストレスもホルモンバランスを乱し血流を悪くするため、生理痛だけでなく生理不順の原因にもなります。
PMS(月経前症候群)
生理の3~10日前に出始め、生理が始まると症状が減退もしくは消失します。 症状は身体的には頭痛、下腹部痛、腰痛、乳房痛、腹部膨満感、便秘、下痢、嘔吐、顔面や手足のむくみなどの他に、喘息、口内炎、発熱、顔面紅潮などもみられることもあります。
精神的にはイライラ、攻撃性、不安、緊張、抑うつ状態、集中力低下、疲労感、不眠、嗜好変化など様々な症状があります。
PMSはうつ病の治療に用いられるセロトニン再吸収阻害薬が症状の軽減をすることから、女性ホルモンとセロトニンの関係が研究されています。 また、まだあまり知られていませんがPMSの重度のものを月経前不快気分障害(PMDD)と呼びます。生理のある方の約5%に認められます。
月経困難症
月経困難症は
- 機能的月経困難症
- 器質的月経困難症
の2種類に分類されます。
生理前、生理時に下腹部・腰痛などの骨盤を中心とした疼痛を主症状とし、頭痛・下痢・脱力感・イライラ・悪心・嘔吐・情緒不安定・乳房緊張などを伴う病的状態のことをいいます。
月経困難症は、機能的月経困難症と器質的月経困難症に分けられます。
大部分は機能性月経困難症が原因とされ、プロスタグランジンの関与が考えられています。
機能的月経困難症
器質的な疾患がなく、月経困難症を伴うものを機能的月経困難症といいます。
初経~20代前半に多く、生理の第1~2日目に症状が強いが症状の持続は短く、数時間~2日以内です。妊娠・出産・加齢に伴い、減弱・消失傾向にあります。
西洋医学的治療ではプロスタグランジン合成阻害薬(非ステロイド性消炎鎮痛剤)、低用量経口ホルモン剤(LEP)、最近ではミレーナ(IUS)を使用するケースも増えてきています。
器質的月経困難症
子宮内膜症、子宮腺筋症、子宮筋腫、子宮頚管狭窄症、子宮奇形、骨盤内臓器の炎症・癒着などが原因となっているものを器質的月経困難症といいます。生理痛の原因疾患で多いのは、子宮内膜症と子宮腺筋症です。
20代後半から発症しやすく、生理前~第4日目ごろまで痛みが続き、生理期間以外にも痛みが生じることがあります。
また、年齢にともなって症状が悪化するケースが多いです。
西洋医学的治療では、それぞれの疾患に対する治療を行いますが、主に鎮痛剤、ホルモン療法、手術療法が用いられます。
基礎体温と生理痛
当院では、患者さんから今までの痛み方、体質、治療状況、生理周期等、関係することをうかがって、原因を突き止めます。
女性の体はデリケートです。どの年代においても女性ホルモンのバランスが関係するため、確認する「問診」「脈診」をとても大切に考えています。
問診後は、実際にどのような状態なのか、脈を診たり、基礎体温を確認することで生理周期の変化、乱れも読み取ることができるため確認します。西洋医学、東洋医学双方の診断を融合することで、治療効果は格段に高まります。
治療では、不妊治療同様に、生理周期の中で、治療方法が変化します。それは、月経が始まる低温期、排卵期、排卵後の高温期で女性ホルモンの優先順位が変わるからです。
また、基礎体温のグラフが
- 高温期が短い
- 高温期の体温が低い
- 全体的にバラバラ
- 全体的に低い
- 排卵から高温期になるまで時間がかかる
- 高温期の途中で体温が下がったりする
など理想的な基礎体温のグラフではない、すなわちホルモンバランスが乱れている場合は、その状態に合わせて治療法を選定し、理想的な状態に整えることで生理痛を緩和していきます。
東洋医学から見た生理痛
東洋医学では生理痛のことを『痛経(つうけい)』と呼びます。
中国最古の医学書「黄帝内経 素門」の中で女性は、
- 7歳 歯が生え変わり、髪も長くなる
- 14歳 天癸が充満し、生理が始まる
- 21歳 身体が成熟する
- 28歳 筋骨は充実して、最も豊かになる
- 35歳 顔の色艶が悪くなり、髪が抜け始める
- 42歳 白髪が進行する
- 49歳 生理が停止する
と記されています。
天癸とは、成長・発育・生殖機能を促進、維持するものであり、月経のことだと思ってください。天癸が枯渇すると任脈と衝脈(どちらも子宮に源を発する経脈)に血を注ぐことができなくなり閉経を迎えます。
女性が発育成熟してくると、衝脈や任脈、および気、血が充実して生理が始まります。したがって発育が不十分だったり、気血が不足すると生理の異常や痛みが現れます。また、子宮は肝・脾・腎とも関係が深く、それらの異常によっても生理痛が起こります。
- 肝:肝は血を貯蔵して体の血流量を調節する
- 脾:飲食物から作られた気(後天の精)を全身に運搬する、血や水分を調整する
- 腎:人体の生命活動維持する、先天の気と後天の精と融合し生殖用の精を貯蔵
生理痛に対する鍼灸治療
鍼灸治療の原則
東洋医学では、子宮のことを「女子胞」、「胞宮」と呼んでいます。
そして、胞宮の機能と栄養は、胞宮と直接つながっている衝脈・任脈によっておこなわれています。東洋医学では、この二脈の変調によって婦人病が起こるとされています。例えば生理痛が強い場合は、この二脈に関係する臓腑・経絡を調節する必要があります。
ここでいう臓腑・経絡の調節とは、腎気を補い、脾胃を和し、肝気を疎し、気血を整えることです。
脾胃とは、後天の精と呼ばれていて、生まれてから飲食物を消化吸収することで生命力にしている機能のこと。脾胃の調子を整えることで生命力を補い、腎に蓄えます。
また、飲食物を消化吸収する過程で発生する毒を分解するのが肝機能です。肝機能が低下することで解毒できなくなり、また、血を貯蔵する能力も低下してしまうため、貧血や感情の不安定につながってしまいます。肝機能を高めることで月経時に起こる子宮内膜の剥脱による生理痛を緩和できます。
臓腑・経絡の調節と同時に、以下の症例1~4のような特徴的な症状に合わせた治療も追加します。
症例1.肝鬱気滞
イライラなどの感情により、肝気がうっ血する気滞が生じ、そのために血の停滞が起こり、女子胞を阻滞して痛みが起こる
症状:生理前、生理時に下腹部が強く張って痛む
随伴症状:生理出血の量が一定でない、出血に血の塊が混ざる、イライラ・怒りっぽい、胸苦しい、乳房が張る
症例2.気滞血オ
臓腑の異常はなく、気血の流れが悪いために起こる
症状:生理時に下腹部が強く差し込むように痛む
随伴症状:下腹部から腰部にかけての痛み、出血に血の塊が混ざり、排泄されると痛みが軽減する
症例3.寒湿
生理中は体が虚していて寒邪の影響を受けやすい。元来の腎陽虚のある方や生理中の冷飲食、天候による湿気や冷えによって、女子胞にまで寒湿の邪が及び、気血の運行が阻害され痛みを生じる
症状:生理前、生理時に下腹部が冷えて締め付けられるような痛みが出現
随伴症状:生理期間の延長、経血量の減少、手足が冷える、下痢、おりものが増える
症例4.気血両虚
元来、気血不足の人や大病後などの気血両虚の方は生理の出血によりさらに気血が消耗するため、女子胞も気血不足となり痛みを生じる
症状:生理後期から生理終了後の下腹部の鈍痛
随伴症状:経血量少ない、無力感、息切れ、顔色が白い