過敏性腸症候群

過敏性腸症候群の治療

潰瘍性大腸炎には鍼灸治療が必要です

お腹の痛みとともに、便秘や下痢などが続くお悩みはありませんか。その悩みは、過敏性腸症候群(IBS)かもしれません。

過敏性腸症候群の特徴は、便秘と下痢を繰り返す症状が3ヶ月以上続いていること、そして、他の検査で異常所見がみられないことです。

過敏性腸症候群

過敏性腸症候群の原因はストレスです。現代のストレス社会において、体におけるストレスの影響は度外視できなくなってきたということで、ストレスを受けた体の腸は、収縮運動が激しくなり、また、痛みを感じやすい知覚過敏状態になります。この状態が強いことが過敏性緒症候群の特徴です。

過敏性腸症候群には、自律神経の乱れを整え副交感神経の活用を優位にして過剰な腸の収縮運動を落ち着かせ、免疫力をも活性化させる鍼灸治療が有効です。

過敏性腸症候群の診断基準

現在、過敏性腸症候群の診断基準は2016年に改定されたローマⅣです。

また、ローマⅢからⅣに変更された最大の要点は腹部不快感を診断基準から除外したことです。

ローマⅣ診断基準

最近3ヶ月間、月に4日以上腹痛が繰り返し起こり、次の項目の2つ以上があること。

  1. 排便と症状が関連する
  2. 排便頻度の変化を伴う
  3. 便性状の変化を伴う

期間としては6ヶ月以上前から症状があり、最近3ヶ月間は上記基準をみたす

※大腸に腫瘍や炎症などの病気がないこと

ローマⅣ:便の性状と頻度による分類

便秘型 硬便または兎糞状便が25%以上あり、軟便または水様便が25%未満のもの
下痢型 軟便または水様便が25%以上あり、硬便または兎糞状便が25%未満のもの
混合型 硬便または兎糞状便が25%以上あり、軟便または水様便も25%以上のもの
分類不能型 便性状異常の基準が上記のいずれも満たさないもの

過敏性腸症候群は、ストレスの影響で自律神経が乱れ、排便のリズム、形状が崩れてしまう病気です。そのため、ストレスの原因となる会社等が休みの日やプライベートなどにはあまり症状が出ず、ストレスの多い時期になると症状が強くなる傾向にあります。

診断基準にある便の状態をわかりやすく言い換えると以下のようになります。

便秘型:けいれん性便秘

便秘型は腹痛を伴い、ウサギのフンのようなコロコロした便がポタンと落ちて水に浮かびます。

下痢型:神経性下痢

下痢型は激しい腹痛の後、粘液性の下痢便が出ます。
朝起きてすぐ、朝食後、出かける前、電車の中、到着後など、便意をもよおす回数が多いのが特徴です。

混合型:交代性便通異常

以前は、過敏性腸症候群の特徴として便器と下痢を繰り返すことがあげられました。まさに混合型が典型的な例となります。

混合型は下痢と便秘を繰り返します。 便通の異常以外に食欲不振や腹部膨満感、吐き気、おなら、頭痛などを伴う場合もあります。

過敏性腸症候群の合併症

過敏性腸症候群で、注意すべき点は、合併症を引き起こしたり、症状が長期継続し、中には症状の種類が変化することがあることです。

一部報告によると、たとえば下痢型の患者さんの場合、12年後も下痢型のままの人は20%、15%の人は混合型に変化、35%の人は症状がなくなったとの報告があります(便秘型になった人はいませんでした)。
※日本消化器病学会ガイドライン

過敏性腸症候群の合併症

過敏性腸症候群の治療

過敏性腸症候群でお悩みの方は、すでに様々な治療をしてきたかもしれませんが、しっかりと治すには、まず自力で体を正常化する必要があります。いつまでも薬に頼っているとなかなか症状が安定しません。

しっかり治すには鍼灸治療が効果的です。鍼灸治療は、今感じている痛みや便通異常を和らげ、異常をきたす元となるストレスの影響を受けた自律神経の乱れを整える治療法です。

鍼灸治療の良いところは、過敏性腸症候群の治療でよく使用されるセロトニン拮抗薬や抗うつ剤などの薬物にみられる副作用がないことです。

また、過敏性腸症候群に対する鍼灸治療の効果は、世界中の国々で過敏性腸症候群患者さんを対象に鍼灸治療の臨床研究論文が報告されています。以下はその一部をご紹介します。

過敏性腸症候群専門外来

過敏性腸症候群に対する鍼灸治療の効果

1.便秘優勢型過敏性腸症候群患者における脳腸機能に対する電気鍼治療と温灸の比較:ランダム化対照試験

便秘型IBS患者63人に対して、天枢・上巨虚に鍼通電(2Hz 30分)あるいは温灸を6回/週で4週間行った(計24回)。

鍼通電群では、腹痛、腹部膨満感、排便回数(約2/週→約5/週)、排便困難感、便の性状(ブリストルスケール;約1.5→約3.3)が改善した。

また、不安感、抑鬱感が治療直後から3ヵ月後にわたって改善した。さらに直腸をバルーンで刺激した時の排便切迫感や痛みも改善した(温灸より効果があった)。

MRIで直腸をバルーンで刺激した時の脳の神経活動をみると、前帯状皮質、前頭前皮質などの神経活動が活性化したが、鍼通電治療後には活性が低下した。

2.下痢が主な過敏性腸症候群または機能性下痢の患者に対する電気鍼治療: ランダム化比較試験

下痢型IBS患者448人に対して、①曲池・上巨虚への鍼通電(15Hz 30分,16回/4週)、②天枢・大腸兪への鍼通電(15Hz 30分,16回/4週)、③ロペラミドによる薬物療法の効果を比較した。

鍼通電はロペラミドと同等の効果を示した(排便回数が減少、便性状が改善、普通便が増加)。

3.過敏性腸症候群に対する鍼治療:プライマリケアに基づいた実用的なランダム化比較試験

116名のIBS患者に対して、中医学的な診断を元にした個人に応じた鍼治療を約3ヶ月間に平均10回行った。

IBSの症状の度合いを評価するIBS Symptom Severity Scale(SSS)が、鍼治療を併用した場合に有意に減少した。さらにその効果は6ヶ月後、12ヶ月後も持続した。

4.過敏性腸症候群に対する鍼治療、二重盲検対照研究

25名のIBS患者に対して、合谷に置鍼(30分)を4週間行うと、全身状態と腹痛が改善された。

5.IBS患者に対する鍼治療の試験

230名のIBS患者に対して、下脘・天枢・太衝・公孫・内関・上巨虚に置鍼(20分)を2/週で3週間行うと、IBSの症状スコアが改善した。

6.下痢を伴う過敏性腸症候群における灸誘発性鎮痛に関与する脳領域: 機能的磁気共鳴画像研究

下痢型IBS患者80人に対して、中脘、気海、天枢への灸治療を3回/週で2週間行った。

灸治療はIBS患者の症状、QOLを改善した。また、灸治療はバルーン伸展による直腸の痛みを軽減させた。さらに灸治療により直腸伸展刺激による脳の神経活動の興奮が消失した。

7.下痢型過敏性腸症候群患者における脳腸機能に対する電気鍼灸治療の比較:ランダム化対照試験

下痢型IBS患者62人に対して、天枢・上巨虚に鍼通電(2Hz 30分)あるいは温灸を6回/週で4週間行った(計24回)。

鍼通電群では、腹痛、腹部膨満感が改善したが、排便切迫感、排便回数(約5/週→約4/週)、便の性状は改善されなかった。

一方、温灸群では、腹痛、腹部膨満感、排便回数(約5/週→約2/週)、排便切迫感、便の性状(ブリストルスケール;約6.4→約4.5)が改善した。

また、不安感、抑鬱感が治療直後から3ヵ月後にわたって改善した。さらにS状結腸のセロトニン(5-HT)が健常者と比べて下痢型IBS患者で増加していたが、鍼通電、温灸により減少した(特に温灸で減少した)。

8.過敏性腸症候群の症状管理:鍼灸のパイロットランダム化対照試験

29名のIBS患者に対して、個人に応じたツボに鍼治療・灸治療を2/週で4週間行うと、腹痛、腹部膨満、排ガス、便の性状が改善した。

9.松本 淳、石崎直人、苗村健治、山村義治、矢野 忠

罹病期間が4年以上の長期に渡り薬物治療でも症状が改善しなかったIBS患者4人を対象に、週1、2回で計10〜20回の鍼灸治療を行った。

4名中3名に腹痛、腹部膨満感、QOLの改善が見られた。改善がみられなかった1人は、抑うつ感や不安感などの精神症状が強かった。

10.過敏性腸症候群に対する電気鍼治療と灸治療: ランダム化、並行対照試験

IBS患者82人に対して、天枢・上巨虚に鍼通電(2Hz 30分)あるいは温灸を6回/週で4週間行った(計24回)。

鍼通電、温灸ともに腹痛、腹部膨満感、吐き気、嘔吐などの症状が改善した。便秘には鍼通電、下痢には温灸のほうが効果があった。また、健常人より増加していたS状結腸のセロトニン(5-HT)は、鍼通電、温灸によってともに減少した。

当院の治療法について

過敏性腸症候群専門外来

過敏性腸症候群の治療に対する臨床研究は、様々な人種、性別、年齢、地域性によって治療法も効果も変わってきます。そのため、当院での治療は、患者さんの、これまでの症状経過、現在の重症度、体質等を総合して、今の状態に合わせた治療プランを考え提案します。

今まで、病気で苦しんできたからこそ、治療は、心身の負担が無いように心がけ、かつ安全に最短距離で楽になるようにしていきたいです。

過敏性腸症候群でお悩みの方は、いつでもお気軽にご相談ください。